少年と沖縄・離島文化との遭遇

ゲーム業界を舞台にした『大東京トイボックス』(幻冬舎)で「まんが大賞2012」の第2位を獲得したマンガ家、「うめ」。小沢高広(原作担当)と妹尾朝子(作画担当)の男女ユニットである。彼らの新作『南国トムソーヤ』(「月刊コミック@バンチ」で連載中)は、都会育ちの子どもの離島での成長譚を中心にしつつ、インターネット検索では得られない知識の意味を教えてくれる、深みのある作品だ。

主人公の狩野千晴(チハル、小学5年生)は母の残した「誰よりも遠くへ」という言葉をたよりに都会から沖縄本島より南西約500㎞の羽照那島へやってくる。いきなり遭遇するマンタライド(巨大マンタに乗って海を泳ぐ!)、島時間、ヤギの屠殺など、カルチャーギャップに驚かされてばかりだが、子どもらしい柔軟性で徐々に島に馴染んでいく。とっつきにくいが、素直な性格の同級生である島人、我那覇竜胆を偶然助けたことで、チハルは彼に気に入られ、以後行動を共にするようになる。

羽照那島は沖縄本島とは異なる独立した文化をもっており、伝説、神話、禁忌などが多く現存する場所だが、チハルはそういった未知との遭遇に対する時、都会の少年よろしくスマートフォンを使いインターネット検索をするのだった。

しかし、島の伝説の「翼竜の化石」を探そうとする時に、チハルは自分のやり方の間違いに気づかされる。珊瑚礁が隆起してできた島なのだから、化石は存在しないという結論を出したチハルに、担任教諭は独自の研究成果によって隆起珊瑚礁の下に(化石が存在しうる)堆積岩の地層があることを教える。インターネットに仮託した知識を覆され、チハルは自らの「好奇心の壁」を意識するようになる。

さらにチハルが島の伝統的祭祀や同世代の巫女に触れることで、ニライカナイ究明へと物語の深度が増していく。
ニライカナイとは沖縄、奄美群島各地に伝わる他界概念で、「遥か海の東の彼方」「海の底」という理想郷や死後の世界を指す。「浦島太郎が助けた亀に乗って竜宮城を訪れる」という有名な昔話もニライカナイの概念に近似している。

本作は“青春離島暮らし”といういかにもマンガらしいパッケージングだが、民俗学やSFをちりばめ、深く読み込ませる要素をいくつも交錯させている。9月時点ではまだ1巻が出たばかりだが、今後の物語の展開は大いに期待できる。ニライカナイや離島の古代信仰などを調べて作品に臨めば、何度でも読み返すことになることは間違いない。

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文=凹田カズナリ
街の文化を支える書店チェーンで勤務。平和台→早稲田→五反田店でコミック担当を歴任。現場で仕入れた知識を広めるべくマンガナイトにも参画。2011年~「このマンガがすごい!」「このマンガを読め」にもアンケートを寄稿。日本橋ヨヲコ、鶴田謙二、長田悠幸、阿部共実、きくち正太、山田穣、谷川史子、堀井貴介、沙村広明、松本藍、篠房六郎(敬称略・順不同)を筆頭にオールジャンル好きな漫画多数。