マンガナイトセレクト お仕事マンガ5選~マンガでわかる日本のお仕事事情~

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4月は新生活がスタートする季節。これを読んでいる方の中には、今年から新社会人となった方もいるでしょう。社会人になって久しい方も、新社会人だったころの自分を思い出しながら、初心を返って襟を正したり、自分の変化や成長を実感する季節かもしれません。
今回は、そんな季節に相応しい、「お仕事」を描くマンガを選びました。

ところで、海外の方にとって、日本人の「働く」イメージは「勤勉」「長時間労働」「ものづくりに長けている」等でしょうか。確かにそういう面も、いまだに色濃くあると思います。でも、実際はそれだけじゃない。ぜひ、日本の働き方そのものや、働くことに対する価値観の多様性を感じとって、作中の登場人物たちと一緒に「お仕事」を疑似体験してみてください。

『カレチ』池田邦彦

日本が世界に誇るサービスのひとつに鉄道があげられる。車両や運行システムだけでなく、それに関わる人々の努力の上に世界一正確なサービスが実現しているのだ。池田邦彦『カレチ』は貨客列車の車掌を主人公に鉄道に関わる人たちの仕事と人生を描く作品だ。ただ、その中に描かれているのは明文化されたルールを守るだけではなく、仕事に誇りを持ちながらも、人情厚く、臨機応変に利用者第一の判断をする、倫理的な鉄道員たちの姿である。殺伐としがちな現代の職場において、欠いてしまいがちな「思いやり」を再認識させてくれる名作といえる。(いけだこういち)

『宮本から君へ』新井英樹

大学を卒業したばかりの主人公・宮本は都内の文具メーカー新米営業。右も左も分からないながらに先輩や取引先に噛み付くことだけは一人前。とにかくがむしゃらで社会の理不尽には屈せず、自分の理想をところ構わず主張し、そのたびに現実との乖離に打ちのめされる日々。たまに情熱がいい方向に行くが、情熱だけではうまくいかないのが仕事である。新社会人の頃に読むとあまりにも青臭く「こんなサラリーマンになりたくない」と思うだろうが、社会人経験が増えるごとに感想が人によって大きく異なってくる本作。これからの社会人生活で時折読み返し、そのたびに自分の変化を発見してみてほしい。(kukurer)

『スキエンティア』戸田誠二

自由の女神ならぬ「科学の女神」像が高層タワーの上から人間の生活を見下ろす近未来の日本。しかし、ここで現代に生きる我々と同じように生きづらさを抱える登場人物たちを救うのは、高度な科学技術そのものではない。彼らはひたむきにそれぞれの仕事に打ち込み、悩み、苦しみ、葛藤しつつも大きな達成感を得る、その過程で少しだけテクノロジーの力を借りながら、やがて試練を乗り越えていく。いつの世も、大人の生きる道は険しい。みんな何かを失ったり、諦めたり、挫折しながら、それでも現実に立ち向かっていく。泥臭く実直に自分の仕事をこなすことの喜びや、その姿勢の尊さを描き出す本作は、そんな働く大人たちへのエールのような作品である。(鈴木史恵)

『アゲイン!!』久保ミツロウ

働くとは「はた」を「らく」にすることだとか言うように、日本人の労働観は身近な集団の中でどういった役割を果たすかという問題抜きには成り立たない。自己実現というより、求められた職責に適応する行為としての仕事。その萌芽は、就職以前の学園ものにも表れている。卒業間際で自分にも周りにも不平タラタラだったさえない主人公が、タイムスリップして高校生活をやり直す(=アゲインする)ことになったのをきっかけに、一種の開き直りから応援団を舞台に、以前なら絶対引き受けなかったような役どころを担い、あがく中で意外な能力を発揮し、周りも変わっていく。集団の中での役割を通じた個人の自己体現というものを、信じてみたくなる作品だ。(洛中洛外)

『独身OLのすべて』まずりん

新入社員が社会に入って直面する大変なことに仕事はもちろん、職場の人間関係があるだろう。この作品はデフォルメされたノブ子、マユ子、タマ子の独身OLたちが世間を知らない新入社員や充実した生活を送る既婚者に毒舌を吐き、あるいは共感を生み、あるいは悲哀を生むWEB連載のフルカラーコミックだ。アラサーからアラフォー世代に共感しやすいネタが各所に散りばめられているので同世代が共感することは間違いないのだが、新入社員が本作を読むことによって上司たちのネタ元や共通言語(シークレットコード)を事前学習して職場の人間関係を円滑に回す役にも立つ職場人間関係のバイブルとしてもオススメしたい。(オオタカズナリ)