マンガリーディングナイト003

日本が世界に誇る文化、マンガを通じたコミュニケーションを目指す、マンガリーディングナイト。10月30日に第3回を開催しました。

当日はあいにく台風が関東を直撃。神奈川のほうでは、一部電車が止まるなどの事態も発生しましたが、懐かしのマンガや新しいマンガ、そしてマンガメシを目当てに、約60人が神保町の漫楽園に集まりました。

恒例のマンガブース、今回のリーディングナイトは1970年代から2010年まで、年代別に5つに分けました。ブースには、それぞれの年代にあうマンガを置き、参加者は当日、興味を持ったブース内へ。

今回のワークショップのお題は「各年代を代表するマンガから、印象的なセリフをブースごとに選ぶ」。参加者は、黙々とマンガを読んだ後、選んだブースごとにマンガの中から「くじけそうなときのセリフ」「キュンとしたセリフ」「爆笑」「時代を象徴するセリフ」「思わず泣いてしまう一言」を選びました。選考中は、どのブースもかなりヒートアップしていました。

「くじけそうなときのセリフ」は1970年代ブースチームから「ガラスの仮面」のセリフ。40度の熱に苦しみながら舞台にたつ、主人公北島マヤに、師匠の月影先生が「倒れたらどうします」と問いかけたときのセリフ「起きあがります」。強いマヤの視線が印象的だったセリフです。

2000年代ブースチームからは名作となりつつある「ONEPIECE」がエントリー。主人公らが、ある島で、空に浮かぶ島といわれる「空島」の話をして笑われたとき、海賊・黒ひげがいうセリフ「人の夢は終わらねえ」。このあと見事主人公らは空島にたどり着くことになります。1990年代の「SLAM DUNK」の名セリフ「あきらめたらそこで試合終了ですよ」に通じる精神が流れています。

「キュンとするセリフ」には、なんと「北斗の拳」のセリフがエントリー。主人公、ケンシロウが叫ぶセリフ「この世に俺より強いやつはいない」「おれに無謀という言葉はない」。なんとも熱いセリフですが、「肉食系男子の発言にキュンときました」という女性からのコメント付きでした。

2000年代ブースチームからエントリーした「おおきく振りかぶって」は、野球部高校生の青春を描いたマンガ。ネガティブ思考の主人公(ピッチャー)に、仲間となるチームメイト(キャッチャー)が、主人公の手を握りしめながらかけるセリフ「投手としてじゃなくても俺はお前が好きだよ!!」 「だってお前、頑張ってんだもん」。主人公が心を開いていくきっかけにもなります。

2010年ブースチームが発表したのは「君に届け」から、主人公の恋のライバルのセリフ。「だって風早が好きになってくれなきゃ意味ないじゃん」。「がんばっている女の子が報われないのはつらいですよ」(発表者)とのことでした。

「時代を象徴するセリフ」には、各年代から多くのセリフがエントリー。2010年代ブースチームは「モテキ」から主人公の「うん、でもよかったらまた誘って」というセリフを挙げ、「男の子が誘っていた1990年代に対し、今は女の子に誘い文句を言わせる時代。胡桃ちゃん(君に届け)のように、女の子は好かれようとがんばっているのに。10年もたつと男子はこんなにも何もしなくなるのか」とのコメントが出ました。

1970年代ブースチームからは、「あしたのジョー」より「そこいらの連中みたいにぶすぶすくすぶりながら不完全燃焼してるんじゃない」というセリフ。あのよど号事件を引き起こした学生らを突き動かしたセリフは、まさに時代を動かした言葉です。

経済的な時代の変化を象徴するセリフを挙げたのは1990年代ブースチーム。「ご近所物語」から「あんたはもーファミコンばっかりして… 学校の課題やったの? 目的もないのにビジュアルデザイン科なんてはいったりするから。高い学費払ってんのに。お父さんも一緒にやってないでなんかいってくださいよ」というお母さんから登場人物の1人へのお説教のセリフ。ここには、①ビジュアルデザイン科に子どもを通わすことができる1989年代バブルの裕福さの残滓 ②お父さんには敬語を使う、父親の権威の面影、が感じられると社会学的考察を見せてくれました。

「爆笑のセリフ」は各チームが苦戦。その中で光ったのは、1970年代ブースチームがあげた「アストロ球団」からのセリフ。このマンガは「超人スポーツマンガ」(各選手が、超人的な技を繰り出し、さながら野球など普通のスポーツが格闘技マンガとなったもの)の先駆けともいえる作品。この中で、超人的技を繰り出しすぎた選手の1人が「どなたか宇野球一の代打をお願いしたい」と、観客席に向かって叫ぶというもの。通常の野球のルールからすれば常識外ですが、まさに作者ルールといえるもので、笑いを誘います。

各チームとも発表スタイルがそれぞれ個性的で、選んだセリフを書いたスケッチブックにイラストを描くチームから、はたまた4コママンガ風の発表まで。細部まで飽きさせない発表になりました。

そして、リーディングタイムの後は、前回に引き続きマンガのメニューを再現した「マンガメシ」が登場しパーティタイムへ。今回は、年代別企画に合わせて、「クッキングパパ」の各年代のレシピから選んだメニュー。リンゴと海苔の絶妙な組み合わせが味わえる「サンサンド」、かぼちゃの甘みをしっかり味わえる「かぼちゃのチーズケーキ」など。モコメシさん力作の料理に舌鼓をうちながらの、幸せのひとときを過ごしました。(libro)