Kissの事情

初めてこの作品に出会ったのは、小学生高学年の頃。今は無き少女漫画雑誌『Amie』で連載していて、友達から借りて読んでいました(『Amie』に「ちょっと大人のなかよし」というキャッチフレーズが付いていたとは知りませんでしたが、確かに「ちょっと背伸びして」わくわくドキドキ読んでいた…)。高校生のまっすぐな恋愛が「Kissの事情」を通して描かれたオムニバス短編集で、小学生の私にとって、まだ恋という概念は漠然とした憧れでしかなかったけれど「なんて素敵なんだろう」と感動したことをハッキリ覚えています。特に「チョコレートホリック」のとあるシーンと「少年人魚」がお気に入りでした。海野つなみさんのかわいい絵と文字、そして(笑)が多用されるのも新鮮で、ほんわか優しい気持ちになれて大好きでした。その後「復刊ドットコム」でリクエストして、単行本が手に入ったときの感動ときたら…!一気に読み返して、あの頃と全く変わらない透明な印象と、あの頃以上に光ってみえる青春にほろ酔い気分。もはや思い入れの独白となりつつありますが(笑)また絶版になってしまったようで残念…多くの人に読んでもらいたいのになぁ。小学生にもね!

文=山口文子
1985年生まれ。映画制作を目指して迷走中。歌も詠む。マンガナイト見習いで、執筆などをお手伝い。 女子高時代、魚喃キリコの『短編集』をきっかけに、安野モヨコ、南Q太などフィールヤング系を読みあさる。その後、友達と「週10冊ずつオススメ漫画を交換する」修行を数ヶ月行い、興味のベクトルが全方向へ。 思い入れの強い漫画に『BANANA FISH』、『動物のお医者さん』、『ナンバー吾』。岡崎京子の影響を受け続けて今に至る。