2016年4月29日

カナリアたちの舟

高松美咲
うなった
寂しさと一緒に駆け抜けるラスト

「宇宙人が襲来し、突然謎の文明に囲まれた異世界で目を覚ました女子高生のユリ。そこで唯一出会った男性・千宙(ちひろ)と一緒に、その世界をサバイバルしていくことに…」というあらすじだけではこの作品の独特な良さが伝わりきらない~と紹介に迷う作品でした。アフタヌーンらしいSFマンガですが、サバイバル要素があり、ボーイミーツガール的でもあり、主人公の成長ものでもあり…いろいろな角度から楽しめる作品であることは間違いないです。
6話完結の作品で、これが初単行本とは信じられないほど、無駄な回がなくきれいにまとめられています。そして良い意味でも悪い意味でももやもやする読後感です。不条理な目に合って、自分の力でどうすることもできない状況に陥ったとき、自分ならどうするだろうと思わず考えてしまいました。ユリのとった行動が正しいかはわからない。けれども正解がわからなくても走る姿は、とても愛おしくかっこよくも思いました。
ただし決してハッピーエンドではない終わり方。「ユリが『あの景色』を見ていたら違ったラストだったのでは」とおそらく全ての読者に思わせただろう作者の力量がすばらしいです。セリフやシーンの一つひとつがあとになって意味を増す、何度でも読み返したくなる作品でした。

文=松尾奈々絵
1992年生まれ。都内の編プロにいます。好きな漫画家は内藤泰弘さん、西森博之さん。ルパンは次元派。