新黒沢 最強伝説

同作者の「カイジ」シリーズは、巨額の財産や命を賭した極限環境の中で現れる人間心理を描いた作品として定評が高い。この「黒沢」シリーズはその真逆といえる。スーパーでの買い物、職場での変な気遣い…平凡な中年男の独身生活の1コマに、他人の心や哲学が見える瞬間。おかしくも哀しい「人間らしさ」が活写されている。そこに「カイジ」シリーズと同じ極端な誇張表現・くどすぎるセリフ回しをそのまま使う、独特な異化効果も見逃せない。前作のラストが秀逸だったこともあり、ホームレス編の新シリーズを読みはじめて、テイストが少し変わってきた? と心配になったが、2〜3巻と読み進めると、個としてのあり方から、組織論への展開が見られ、前作以上に楽しみになってきた。

文=本多正徳
1980年、広島生まれ。専門出版社勤務。マンガナイトではすっかりイジラれ担当になってしまった最近(!?)。男子校の寮でマンガの面白さに目覚めました。好きなジャンルはガロ系とヘタウマ系。藤子不二雄やつげ義春、水木しげるなどの古典的ナンバーも得意。心のマンガは『ダンドリくん(泉昌之)』『サルでも描けるまんが教室(相原コージ、竹熊健太郎)』でしょうか… ほかの趣味は読書、囲碁・将棋と悲しいほどのインドア派。ウェブサイト/グッズ制作を担当。