かきのたね

“柿野家の一人娘実子ちゃんは、叔父さんが拾ってきた迷い犬を飼うことになりました。タネと名付けて可愛がっているその犬、実は犬に変身した宇宙人だったのです”――決まってこの冒頭文からはじまる一話完結型の連作マンガ。
普通の家庭に異分子が入り込む藤子不二雄マンガのような設定と、均一な線で構築された安定した絵柄は、どこかで読んだことがあるかのような懐かしさを感じさせる。設定と絵柄に斬新さはない一方で、登場人物の表情、会話のかけあいとコマ間の時間感覚がとてもセンス良く丁寧に描かれていており、心地よく読める。
さらさらっと描いているように見せて読者の肩の力を入れさせないながらも、最後の方ではちょっとしたメッセージ性も含まれており、心憎い演出でもある。読めば日常が愛おしくなるはず。

文=本多正徳
1980年、広島生まれ。専門出版社勤務。マンガナイトではすっかりイジラれ担当になってしまった最近(!?)。男子校の寮でマンガの面白さに目覚めました。好きなジャンルはガロ系とヘタウマ系。藤子不二雄やつげ義春、水木しげるなどの古典的ナンバーも得意。心のマンガは『ダンドリくん(泉昌之)』『サルでも描けるまんが教室(相原コージ、竹熊健太郎)』でしょうか… ほかの趣味は読書、囲碁・将棋と悲しいほどのインドア派。ウェブサイト/グッズ制作を担当。