人工知能(AI)やロボットが、身近な存在になった現代。IBMの人工知能「ワトソン」などが登場し、工場や販売店では、ロボットと人間がすでに一緒に働く。最後に残されている領域が、人間同士の感情のやりとり、例えば恋愛だ。人工知能(AI)を組み込み「だいたい人と同じことができる」ロボットと、少女の交流を描いたこの作品は、この最後の領域を描き、「相手を思う/恋愛とは何か」という本質に迫っている。
AI搭載ロボット「ヒロちゃん」に告白した少女「チカちゃん」。もちろんヒロちゃんはこの感情を「データ」としか受け入れられず、チカちゃんは「わかってくれない」と思い悩む。「人間とAIという違い」と思いがちだが、実はこうした感情のすれ違いや不釣合いは人間同士でも起こりうる。他人である以上、相手の感情や思いをすべて正確に理解できるわけではない、と読者は突きつけられるのだ。
こうした「感情のつりあいをどう確認するのか」という問いに対し、作者は「どれだけ相手と時間を共有したいか」という答えを示す。実際「ヒロちゃん」はチカちゃんに会えない間、再開したときデータを蓄積できるように作業領域に空きを作っていた。人間に近づくように作られたからこそ、自分の中で優先順位をつけ、「世界で一番好きな相手」のために自分の中に時間とスペースを作るのだ。そんなヒロちゃんに対し、チカちゃんも可能な範囲で自分のすべての情報を伝えようとする。
数多くの「恋愛」が描かれたマンガでも、「好きな相手はどう判断するのか」という基準は明確に示されてこなかった。「相手とできるだけの時間と情報を共有したい」―データを収集できるAIを相手にしたからこそ、恋愛を頂点とする一対一の交流の究極の判断基準のひとつが浮き上がってきた。作品を読み終わって周りを見渡せば、あなたの「一対一の関係を築きたい相手」が見つかるかもしれない。
2016年7月6日
AIが迫る「相手を思うこと」の本質
文=bookish
1981年生まれ。「ドラえもん」「ブラック・ジャック」から「週刊少年ジャンプ」へと順当なまんが道を邁進。途中で「りぼん」「なかよし」「マーガレット」も加わりました。主食はいまでも少年マンガですが、おもしろければどんなジャンルも読むので常におもしろい作品を募集。歴史や壮大な物語をベースにしたマンガが好み。マンガ評論を勉強中。マンガナイト内では「STUDIOVOICE」のコラムなど書き物担当になっています。マンガ以外の趣味は、読書に舞台鑑賞。最近はサイクリングも。
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