愛すべき娘たち

「美しい母が、自分よりも若い男と再婚する…?」そんな母と娘の確執から始まり、男女の愛、女の友情…登場人物たちがゆるやかに繋がり、最終話のエピソードで一話目がより深く読めるオムニバス短編集。各話それぞれ「女」たちの切実さが胸に迫ります。話は知っているのに、何度読んでもグッときてしまう、この作品の魅力のひとつは「間」ではないでしょうか。登場人物がふと見せる表情、その微妙な変化。アップ。引きの画・寄りの画が、物語を読み進めていく読者の感情に、気持ち良いくらいシンクロします。恋愛劇はもちろん素晴らしいのですが、個人的に、第4話の中学時代の女友達の話に泣きました。気付いたら大人と呼ばれる年齢になってしまった「あの時話したささやかな夢」がある方に、是非。

文=山口文子
1985年生まれ。映画制作を目指して迷走中。歌も詠む。マンガナイト見習いで、執筆などをお手伝い。 女子高時代、魚喃キリコの『短編集』をきっかけに、安野モヨコ、南Q太などフィールヤング系を読みあさる。その後、友達と「週10冊ずつオススメ漫画を交換する」修行を数ヶ月行い、興味のベクトルが全方向へ。 思い入れの強い漫画に『BANANA FISH』、『動物のお医者さん』、『ナンバー吾』。岡崎京子の影響を受け続けて今に至る。