十年後、街のどこかで偶然に

究極の1対1の人間関係といえるのが恋愛。その恋愛を「あえて踏み出すもの」にしてしまった20代が、自分の殻を破って新たな人間関係に築いていく姿を描いた短編集。恋愛というテーマを通じて、「いくつになっても殻は破れる」という普遍的なメッセージを訴える。
登場人物らはみな、10代での失敗を心に抱え、社会人になってからの恋愛に踏み出すことをためらっている状態。20代になり、ある程度「自分」というものが固まってしまうからこそ、「この人は自分の相手をしてくれるのか」と考え込んでしまっている。そんな彼らは「それでも」と踏ん張り、自分なりに思いを伝えあい、それぞれの人間関係を作っていこうとする。年を経て、「思いの伝え方」を学習したのも大きいように思える。短編を通じたメッセージは「大人になっても殻は破れるし、破った後には意外といい世界が広がっている」というもの。これは案外「恋愛」に限らないのかもしれない。

文=bookish
1981年生まれ。「ドラえもん」「ブラック・ジャック」から「週刊少年ジャンプ」へと順当なまんが道を邁進。途中で「りぼん」「なかよし」「マーガレット」も加わりました。主食はいまでも少年マンガですが、おもしろければどんなジャンルも読むので常におもしろい作品を募集。歴史や壮大な物語をベースにしたマンガが好み。マンガ評論を勉強中。マンガナイト内では「STUDIOVOICE」のコラムなど書き物担当になっています。マンガ以外の趣味は、読書に舞台鑑賞。最近はサイクリングも。