2016年2月24日

親なるもの 断崖

曽根富美子
うなった
学校で習わない、女と社会の闇の昭和史

強烈な印象を与えるバナー広告を、あなたも一度は目にしているのではないでしょうか? 電子コミック書店での配信が話題となり、初出から25年を経て紙媒体での新装版刊行に至った本作の舞台は、「鉄の街」として隆盛を誇った昭和初期の北海道・室蘭。飢饉にあえぐ青森の農村からこの土地の花街「幕西遊郭」に売られてきた4人の少女の、数奇な生涯を追っています。
ただでさえ公に語られることはめったにない世界を、ひたすら荒々しく、かつ厳然とした筆致で表現したこの作品。物語自体はフィクションということですが、綿密な取材と調査に基づき、歴史的事実を伝えることを大きな目的の一つとして描かれていることが、明確に見て取れます。
読後に重くのしかかるのが、主人公の一人・お梅の「せめて忘れないでいて欲しい 私のような女たちがいたことを」という独白。読むのに覚悟が要る、場面によっては目を背けたくなる、けれど、読んだことを決して後悔はしない――そんなマンガです。

文=鈴木史恵
1986年2月生まれ、千葉県出身。おもちゃメーカー勤務を経て編集・執筆業へ。マンガ好きとしての原点は物心つく以前から触れてきた手塚治虫と藤子・F・不二雄。24年組、80年代ニューウェーブ、ガロ系、それらの系譜にある青年マンガを中心に、面白そうなものは何でも読みます。マンガ以外の趣味は好きなバンドのライブや映画鑑賞など。